【連載第1回】くすぶりソムリエによるコンビニワインのおすすめ~ボジョレヌーヴォー編

元凄腕コンビニ店長、現くすぶりソムリエの筆者による、コンビニワインのおすすめと、つまみを紹介する新連載開始!ふらっと寄って買えるコンビニワインとコンビニつまみのマリアージュで、今夜1杯しませんか。第1回はセブンイレブンのボジョレヌーヴォー。

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目次

コンビニワインとつまみのおすすめ第1回

20世紀の狂騒・自身の初恋を振り返る

最上のコンビニワイン

コンビニ店長だったソムリエとして、こちらのサイトでコンビニのおすすめワインについて書いてくれない?とご連絡を頂いたのがつい先週のこと。

詳しい話は○曜日の19時に恵比寿のこの店でというLINE。

そういえば最近、誰かと飲むのも久しぶりだという事にふと気づく。

独立して半年、慌ただしくも、時間を持て余しながら過ぎていく時間のなかで、お客様への提案でアタマがいっぱいで、レストランにいた時よりもワインそのものとゆっくり向き合っていなかったような気もする。

このタイミングで〆切のプレッシャーを受けながらワインについて書けるなんてありがたい!独立して自由について考える時間が増えていたところだったんです。

日が暮れても暑さの残る恵比寿。待ち合わせの鍋料理屋は客もまばらながら、つまみはどれも素晴らしい。刺身も素材の良さが伝わってくるし、「ねぎたっぷり豆腐」だって。たまらん。いや、豆腐好きなんですよ。

肴をつまみ、ウイスキーの水割りを飲みながらワインについて熱く語ってみたところ、偉い人から「宮地くん、いい具合にくすぶってるよね~」との賞賛のお言葉。

自分ってそう見えるんだ。なんだか妙に納得。

どこか世間を斜めに見て、理想と現実のギャップとやり切れなさを毛穴から出しながら、なんとかやってるところです。はじめまして、こんばんは。くすぶりソムリエ宮地です。


こうして元コンビニ店長、現ソムリエの僕だからこその「コンビニワインのおすすめ」というテーマを胸に、打ち合わせをちりばめた宴会を後にする。帰路、ほろ酔いでいつものセブンイレブンへ。セブンイレブン、いい気分♪あぁ、今日も酔った。

コンビニのワインも美味しくなっているし、どのコンビニワインをおすすめしようかな・・・とお酒コーナーのワインを左から右へひとつひとつ見たところ、あった!ありましたよ、最上段にお宝発見!

季節外れのボジョレー・ヌーヴォー2015。

いきなりひねくれたチョイスしちゃったよ。

ボジョレー・ヌーヴォーといえば、11月第3週の木曜日、解禁を祝う狂騒がブラウン管を通して日本中に宣伝されていたバブルの象徴(のひとつ)だったことは今は昔。

以前にコンビを組んでいた料理人の父親は年に1度、ボジョレー・ヌーヴォーを飲むのが唯一のワイン消費と言っていた。いっときは日本国民の季節の行事だったんだと妙に納得したことを覚えている。

誰もが一度は通り過ぎるワインの原体験。日本人のワインの故郷、いわば初恋のようなワイン

フランス、ボジョレー地方で、その年に収穫されたガメイ種をマセラシオン・カルボニックというテクニックで2ヶ月ほどで新酒にしてしまう。どこか野暮ったい赤紫の色調、フレッシュで青みを感じ、甘酸っぱいイメージはまさに初恋のそれ。

このワイン、去年の11月からコンビニのワイン棚に並んでいたと思うとグッと愛おしくなってくる。

そうそう、コンビニのおつまみでマリアージュを考えてくれっていわれていたんだ。

初恋のワインとマリアージュかぁ、ずいぶんハードルの高いお題をもらったものだと、頭を悩ませていると、目に飛び込んでくるのはおでん鍋

コンビニでは夏の終わりからおでんが売り出されるんだ。そういえば、さっきの店で鍋食べてないや。

子供の頃、何かの本に「大根、がんも、つみれ」が3大おでん種だと書いてあった。当時がんもを知らない子供だった僕に今も刻まれている鉄のルール。大人になって出汁と揚げと練り物というおでんを構成する要素を知った。

レストランにいるときにボジョレーはもういいやって、お客様の声をよく伺っいました。

昔のヌーヴォーの苦い記憶(本当に不味かった)を皆誰もが今も忘れられないのです。

けれど今、世界中のワインはこの10年で驚くほど美味しくなっています。技術の進歩はもちろん、良いものを造らなければ決して受け入れられないのはワインの世界も同じです。

ボジョレーに使われるブドウ品種、ガメイは鮮やかな色調、どこかオリエンタルな香り、けれど香りよりも味のワインになります。ヴィヴィッドな酸と粒の細かいタンニンとほんのりスパイシーなベリー系のチャーミングな果実味。甘さ控えめのジンジャーシロップにイチゴやラズベリーをつけておいたようなイメージ。

新酒はすぐに飲んだほうが良いといいますが、最近のワインはそんなにすぐにダメになりません。この2015年も常温で9ヶ月放っておかれても、適度に丸みを帯びて、優しい味わいになっていました。

おでんとの相性はがんも→つみれ→大根の順
によく合います。ボジョレーの甘酸っぱくじんわりとした柔らかな滋味は、日本の出汁の味わいにおすすめできるワイン。
イラスト:宮地英典

ボジョレー・ヌーヴォーの解禁は2016年11月17日(木)。20世紀の狂騒を、自身の初恋を振り返るのにこれ以上のワインはない。そろそろおでんが美味しい季節です。
セブンイレブン
ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー2015
生産者:ジョルジュ・デュブッフ
¥2,297(税込¥2,480)
【連載第2回】くすぶりソムリエによるコンビニワインのおすすめ~フロンテラ・ロゼ編

宮地英典

【宮地英典/Eisuke Miyaji】

1976年生まれ

ソムリエ

コンビニエンスストアとワインのプロフェッショナル。 20代は某大手コンビニ店長として数々の商材のトップセラーとして従事。 30代より、接客のフィールドをレストランに移し渋谷の知る人ぞ知る紹介制カウンターレストランでシェフ・ソムリエとして10年間躍。顧客の好みに合わせて料理とマリアージュさせるグラスワインの提供には定評があり、ニコ生「神の雫とワインな一時間」、日本テレビ「シューイチ」、フジテレビ「バイキング」、CM「やずや黄金極みだし」の他、文化放送「中島信也の土曜の穴」など料理と縁のないメディアにも何故か出演。 現在はワインの輸入販売の傍らワインコンサルタント、パーソナル・ソムリエとしてレストランから個人まで幅広くワインの魅力を伝えている。